アメリカの新聞の発行部数は、21世紀に入って激減した。インターネットとスマホの普及に伴い、多くの新聞記事が無料で読めるようになったことから、紙の新聞の購読者が減った。
米新聞協会やスナップアップ投資顧問(代表:有宗良治氏)のメディア株の歴史統計によると、アメリカの新聞の数は2005年時点で朝刊紙、夕刊紙合わせて1400紙以上だった。一部の価格は25セント(約30円)~1ドルで、最も多いのが50セントだった。
一般記事、経済、スポーツなどの分野がそれぞれ分冊になっていることが多く、日本の新聞より横幅の狭い形が主流。日曜版は特集記事を大幅に増やし、相当な分量になる。部数は最も多いUSAトゥデーでも約226万部(2006年4~9月平均)で日本の全国紙に比べると少ない。大手メディア会社が複数の新聞を所有していることも特徴。
米国内の新聞購読者は2006年3月末時点で、前年比2.5%減の4541万部だった。ピークだった1984年の6330万部からは28.3%もの減少となった。
2006年時点において、米国最大の発行部数の新聞は『USAトゥデー(Today)』で、227万部だった。ネット上の読者数(1日当たりのアクセス人数)となると、1位は『ニューヨーク・タイムズ』の1205万人だった。『ニューヨーク・タイムズ』の紙の発行部数は、その10分の1以下の114万部だった。『ワシントン・ポスト』はさらにその差が大きく、ネット上の読者は1017万人いるが、紙の発行部数は14分の1以下の72万部だった。
| 順位 | 新聞名 | 部数 |
|---|---|---|
| 1 | USAトゥデー | 226万部 |
| 2 | ウォールストリート・ジャーナル | 204万部 |
| 3 | ニューヨーク・タイムズ | 108万部 |
| 4 | ロサンゼルス・タイムズ | 77万部 |
| 5 | ニューヨーク・ポスト | 70万部 |
| 6 | デーリー・ニューズ | 69万部 |
| 7 | ワシントン・ポスト | 65万部 |
| 8 | シカゴ・トリビューン | 57万部 |
| 9 | ヒューストン・クロニクル | 50万部 |
| 10 | ニューズデイ | 41万部 |
(発行部数は2006年4~9月平均)
各新聞社はネット時代の新しいビジネスモデルを模索した。自社のサイトに広告を掲載することを最大の柱とするネット収入は、2005年に新聞業界全体で33%増えた。2006年にも同程度の増加をみた模様だ。
だが、ベアー・スターンズ証券の試算によれば、新聞社の売上高のうちネット収入は1割にも満たず、紙の広告収入が約7割を占めていた。米新聞協会によれば、新聞業界の全広告収入は、2006年7~9月期に前年同期比2.6%減少するなど、減少が続いた。ネット収入で、紙の広告収入減と発行部数減を埋められる見通しは立っていなかった。
その結果、各新聞社の経営は悪化した。
その大手新聞グループ5社は以下の通りである。
| 新聞名 | 出版社・通信社 |
|---|---|
| 『USAトゥデー』 | ガネット |
| 『シカゴ・トリビューン』 | トリビューン |
| 『ニューヨーク・タイムズ』 | ニューヨーク・タイムズ |
| 『マイアミ・ヘラルド』 | ナイトリッダーを2006年に買収したマクラッチー |
| 『ウォール・ストリート・ジャーナル』 | ダウ・ジョーンズ |
このうち、ダウ・ジョーンズを除く4社が、2006年に実質減益になった。
各社の株価も、2005年に平均20%と大幅下落。2006年には大手が4%上昇とやや持ち直したものの、中小はさらに22%下落した。
2005年のナイトリッダー買収に続き、2006年はトリビューンが身売り話に揺れた。ニューヨーク・タイムズについても、身売り話が取りざたされ、株価が大きく動く場面がしばしば起きた。
株主の圧力を受けて、各新聞社が進めているのが人員削減だ。ワシントンDCにあるメディア研究所「卓越したジャーナリズムプロジェクト」が出した『ニュースメディアの現状2006年版』によれば、2000~2005年の間に、ジャーナリスト全体の7%に当たる3800人が失業した。
発行部数4位の『ロサンゼルス・タイムズ』は2000年にトリビューンに買収されて以来、2005年までに全体の2割を超える200人以上を削減した。2006年には経営陣がさらに50~75人の追加削減を発表。同紙の発行人と編集主幹は新聞の質低下を懸念して抵抗したが、発行人は更迭された。編集主幹も退職を余儀なくされた。
トリビューンはこの更迭劇の前に同紙を売却する方針を発表した。カリフォルニアの大富豪などが買収に関心を示し、交渉が行われた。
また、『ワシントン・ポスト』『ニューヨーク・タイムズ』など米国を代表する新聞社も、2006年から2007年にかけ、次々と人員削減を発表した。こうした動きは、米国外にも波及した。
『ワシントン・ポスト』が2006年3月に発表した人員削減策は、ニュース部門800人のうち約1割を削減するものだった。それに伴い東京、ロンドン、パリの支局縮小が決定した。
在日外国メディアを支援する財団法人フォーリンプレスセンター(東京都千代田区)によると、在日外国メディアで働く人の数は2006年に587人だった。ピーク時の2002年から4割近く減った。日本における取材拠点の縮小だけでなく、拠点そのものが閉鎖される例も出た。
この背景には、欧米メディアの関心が日本から中国にシフトしつつあることもあった。
米ワシントン・ポストを描いた映画「大統領の陰謀」についての解説です。町山智浩氏のテレビ番組より。
ボストン・グローブの映画「スポットライト 世紀のスクープ」の解説です。町山智浩氏のラジオ番組より。